第20回 病院長のゆかいな仲間たち

イベント
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【栄養管理室】患者さんにおいしい食事を提供

病院長×管理栄養士

岐阜大学医学部附属病院 小倉 真治 病院長

栄養管理室 管理栄養士 西村 佳代子 山田 彩乃

栄養指導、糖尿病教室を開催

小倉 病院内では、管理栄養士の皆さんにもチーム医療のメンバーとして加わってもらっています。

西村 私たち管理栄養士の思いは、患者さんの症状に合わせて、安全でおいしいお食事を提供することが一番であると思っています。給食の調理業務は、シダックスさんに委託していますが、病院食については、私たちだけでなく、医師や病棟看護師も検食しています。食堂では対面で患者さんにお食事をお渡ししているので、生の声をお聞きするように努めています。また、1か月に1度、嗜好調査や残食調査などの食事アンケートを行っていて、よりよい献立にしていこうと努力しています。

山田 委託している栄養士の皆さんとも協同して、献立会議を月に1度開いています。患者さんの声や検食をもとに、よりよい食事を提供できるように話し合いを重ねています。

小倉 病院長になって、初めて検食した時に、「これはまずいよ」と思った。前から評判は聞いていたけれど。そこで、まずお米を変えたよね。日本人なので、お米の印象は強く残るよね。そこからぐっと良くなったと思います。

山田 献立については、季節などに合わせて、旬な食材を取り入れたり、行事食を見直したりしています。22日サイクルの献立になっています。

西村 治療上、食事制限のない方は、主菜を2種類のメニューから選ぶことができる「選択メニュー」を実施しています。

小倉 食事も温かいものを提供しているよね。

西村 直前まで冷温蔵配膳車に入れてあるので、温かい料理は温かく、サラダや果物などは冷やした状態でお出しできるようにしています。

小倉 カロリー計算などは。

西村 主食の分量を変えたり、おかずに入れる材料を変えたりして、200キロカロリーずつ設定できるようにしています。患者さんが入院された時に、管理栄養士がベッドサイドに伺い、全身の状態や身長、体重、アレルギーなどを把握して、必要量を算出しています。糖尿病をお持ちの患者さんの場合はエネルギー量を調整したり、血圧が高い方には減塩食に変更したりすることを主治医に提案しています。

小倉 何人くらいのスタッフで担当しているんですか。

山田 病院の管理栄養士は現在13人です。病室訪問のほかに、栄養指導や集団糖尿病教室、チーム医療の業務を中心に担当しています。

小倉 年間で新入院患者約1万4000人ほどですが、1人何人くらいの患者さんを担当されていますか。

西村 年間2000人近い患者さんに対応しています。

小倉 診療科の担当は分かれているんですか。

西村 1人2つの担当病棟があり、それぞれ責任を持って管理するようにしています。

山田 私は消化器外科を担当しています。術前から術後まで、栄養管理ができるような体制で臨んでいます。

あらゆる病態の知識を高める

小倉 栄養士を目指したきっかけは。

山田 栄養士は企業や給食会社、福祉などいろいろな分野がありますが、姉が看護師をしていて、臨床の現場に親近感があって、病院の栄養士を目指したいと思いました。

小倉 大学病院を選んだ理由は。

山田 大学3年の時に実習でお世話になって、委託している給食会社の栄養士と病院の栄養士との関わりが密接で、協力しながら患者さんのために給食を出しているところに魅力を感じました。また、いろいろな病態を勉強したいという思いもありました。

西村 臨床に興味があって、大学の実習で、病院の栄養士に魅力を感じました。実際仕事をしてみて、患者さんの治療にどう還元していけるか模索しています。例えば、化学療法中の方は、味覚の異常があって食べられない患者さんも多いので、今後、化学療法用の献立も作っていきたいと検討しているところです。

小倉 抗がん剤の影響で手術後の食事対応や栄養管理は難しいよね。より専門性の高い管理栄養士の資格はあるんですか。

西村 大学病院では、さまざまな病態と関わる機会が多いので、あらゆる疾患に対して、病態の知識を求められています。私も、糖尿病患者さんが自己管理できるように導く「日本糖尿病療養指導士」をはじめ、低栄養の患者さんに医師、看護師、薬剤師、管理栄養士がチームで栄養介入する「NST(栄養サポートチーム)専門療法士」、また、当院はがん拠点病院ですので、がん患者さんの栄養相談を専門的に行う「がん病態栄養専門管理栄養士」などの資格を取得しています。患者さんに寄り添いながら、治療に貢献できることを目指しています。

多職種と協力して患者さんをサポート

小倉 管理栄養士のやりがいや魅力は。

西村 栄養は治療の基盤になります。術後、救急、リハビリという場面においても、栄養状態が良くないと回復が遅れます。患者さんが早期に退院することができたり、医師や看護師、薬剤師などの病棟スタッフと一緒になって患者さんが良くなっていく過程がみられたりすると、モチベーションが上がり、管理栄養士として良かったと思います。

山田 食事は必ず1日3食、毎日のことになります。消化器外科を担当するようになって、がん患者さんの術前から術後を通して、多職種のコメディカルのスタッフと一緒に協力して、退院までチーム全体でサポートするところに魅力を感じます。そのほか、緩和チームにも関わっていますが、家族や患者さんに寄り添ったサポートができるように努めています。

効率化とサービス拡充に努める

小倉 救急の領域も栄養と関係ないと思われがちだけど、きわめて大事なんですよ。非常に状態が悪い重症な人が多いので、ちゃんと栄養をあげないと、ばい菌などと戦える体にならないからね。

西村 最初は救急の重症患者さんと管理栄養士がどう関わって良いのか分かりませんでしたが、小倉先生から毎週月曜日にあるカンファレンスに参加することを提案され、感染症と栄養について、一体となって取り組める体制になったので良かったです。

小倉 そのほか、改善されてきた点や、これからも充実させていきたい点はありますか。

山田 近年、新しい機器として、クックチルができる機器を導入してもらい、料理の幅が広がりました。クックチルとは、調理した料理を急速冷凍して、食べる直前に再加熱します。料理のメニューが充実するなど、効率化とサービスの拡充が進みました。今後もより良い献立に生かしていきたいです。

小倉 岐阜大学病院の給食は満足度調査で7割以上が良いと評価してもらっているので、さらに良くしていくために、例えば、大学の農場を使った野菜を提供するとか、この1品については、知り合いのシェフや料理人のレジェンドに頼んで監修してもらって、減塩食のだしをジュレにするとか。一ひねりして、岐阜大学病院の食事には何かブランドがあるぞ、食事を楽しみに入院するという患者さんがいてもいいくらいだと思います。最終目標は「患者さんの幸せのために」と明確なので、新しいことにどんどんチャレンジしていただきたいと思います。

【管理栄養士とは】

厚生労働大臣の免許を受けた国家資格。 病気を患っている方や高齢で食事がとりづらくなっている方、健康な方一人ひとりに合わせて専門的な知識と技術を持って栄養指導や給食管理、栄養管理を行います。管理栄養士は、乳幼児期から高齢期まで、あらゆるライフステージで、個人や集団に食事や栄養についてアドバイスをしたり、特定給食施設等で献立を立てて食事を提供したり、栄養状態の管理を行い、食と栄養の専門職としてサポートしています。

【過去の様子】

第一回 病院長×保安職員

第二回 病院長×医療ソーシャルワーカー

第三回 病院長×誠仁会

第四回 病院長×リハビリテーション科

第五回 病院長×クラーク

第六回 病院長×がんセンター

第七回 病院長×公益財団法岐阜県ジン・アイバンク協会

第八回 病院長×MEセンター

第九回 病院長×(株)トーカイ

第十回 病院長×アシスタントコンシェルジュ

第十一回 病院長×シダックス㈱

第十二回 病院長×セントラルヘリコプターサービス㈱

第十三回 病院長×視能訓練士

第十四回 病院長×総務課

第十五回 病院長×検査部

第十六回 病院長×医療支援課

第十七回 病院長×薬剤部

第十八回 病院長×医事課

第十九回 病院長×経営企画課

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