第13回 病院長のゆかいな仲間たち

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【眼科・視能訓練士】斜視や弱視の患者を訓練

病院長×視能訓練士
岐阜大学医学部附属病院 小倉 真治 病院長
眼科 視能訓練士    濱﨑 利恵  篠原 雅子

年間延べ250人を訓練 医師に検査の提案も

小倉 視能訓練士のお仕事について聞かせてください。

濱﨑 眼を専門とする検査技師で、斜視や弱視の子どもたちの訓練をしています。

小倉 だから視能訓練士という名前なんですね。

濱﨑 そうなんです。「眼科検査技師」ではなく、「視能訓練士」なんですね。元々はドクターが検査の中でも斜視や弱視の業務まで手が回らないということで誕生しました。

小倉 岐阜大学病院では年間どれくらいの訓練を行っていますか。

濱﨑 新規を数えていませんが、延べ数で250名ほどです。

小倉 皆さんお子さんですか。

濱﨑 基本は子どもたちで、手術に向けた訓練になります。斜視のある子どもたちは、手術をした後、50%くらいの確率で斜視に戻ると言われています。戻らないために、手術までに筋トレなどの訓練を行っています。

篠原 そのほかには、弱視の患者さんが来ます。視力が弱い子どもたちには、良い方の目を隠して、視力が弱い目で物を見る訓練を重ねてアドバイスしています。

小倉 訓練士はいま何人ですか。

篠原 6人です。

小倉 1日の流れはどんな感じですか。

濱﨑 基本的に、午前中は予約の患者さんの検査をしています。6人いますので、機能別に効率よく業務にあたっています。午後は保育園や幼稚園、小学校から帰ってくる3時過ぎから、子どもたちの訓練がスタートします。

小倉 眼科医、看護師、訓練士は、チームの中でどういう役割分担になりますか。

濱﨑 先生が診察して、症状を確認した後、「この検査をしてほしい」というオーダーが入ります。

小倉 ドクターと話すことは。
濱﨑 安定している所見の方はあまりないですが、私たちから症状を見て、ほかの検査も追加したほうがいいのではとお話することもあります。トレーニングメニューを組み立てる時は、先生方から聞かれることも多く、提案してお伝えしています。

専門知識を習得 一生の仕事にしていきたい

小倉 視能訓練士を目指そうと思ったきっかけは。

濱﨑 もともと岐阜大学病院の眼科の外来で看護師として働いていました。眼球は直径25ミリくらいの構造なのに、眼に炎症があると内科や外科に関連する手術もあれば、斜視や弱視もあって、たくさんのことが詰まっていると感じました。看護師だけの知識だけでは専門性は得られないと思い、視能訓練士になろうと学校に通うことにしました。

小倉 看護師から転身されたんですね。

濱﨑 現場実習があったので、一度看護師を辞めましたが、募集がかかっていたので、検査技師として戻ってきました。

篠原 私は小さいころから病院で働くことにあこがれがありました。岐阜県内の専門学校で視能訓練学科があることを知って、私自身も視力が悪かったので、しっかり勉強したいと思いました。3年生の実習の時に病院で患者さんに触れ合ったり検査したりした時に、患者さんに感謝されたり、「頑張ってね」と声を掛けられたりして、一生の仕事にしていきたいと強く思うようになりました。

小倉 どうして病院で働きたいと思ったの。

篠原 元々ドラマを見るのが好きで。

濱﨑 看護師ではなかったんだ。

篠原 注射したり、採血で針をさしたりするのがこわいなあと。あと、数字や図形が得意分野で面白みを感じました。

小倉 視野の角度などですか。
篠原 レンズの度数を計算したり、患者さんにメガネを選定する時に数字を使ったり。
小倉 なるほどね。

患者さんの回復の声が励みに

小倉 この仕事をやっていて良かったことは。

濱﨑 視野を失って、新聞が読めないという高齢の方がいらっしゃいました。家族とも疎遠で、回覧板を回すのに一苦労するとお話されていました。当時、2~3時間かけてお話を聞いたり、時間をかけて眼鏡を調整したりしていました。次に来られた時、「見えるようになった」という話を聞いて、「これがやりたかったんだ」とその方のおかげで初心を思い出すことができました。

篠原 交通事故に遭われて、その後、斜視になって物が二重に見えるという方がかかられていました。手術もできず、経過を見ていくしかありませんでした。そこで、レンズの屈折を利用して、一つに見えるようにする眼鏡で対応していました。しばらくお目にかからなかったのですが、ある日、初診で来られて、「治ったんです。全部なくなったんですよ」とわざわざ報告しに来てくださった時はうれしかったです。

小倉 視能訓練士にお礼を言いに来たんですか。

篠原 そうですね。その方は気分も晴れやかな感じで感動しました。

小倉 それは感動しますね。心の支えになっているんですね。課題はありますか。

濱﨑 今は職員のバランスが取れて、安定しているように感じます。一方で、コメディカルを考えた場合に、眼科の外来という中での活動になるので、なかなか他部署や多職種との交流も限られているのが現状です。例えば、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士などリハビリ系のスタッフや、放射線技師や臨床検査技師などの技師など、医療職でも看護師ではないメディカルスタッフと話す時がほとんどないので、働き方など、意見を交換できる機会があるといいと思います。

小倉 作ったらいいんじゃない。メディカルスタッフ懇談会とか。

濱﨑 いろいろ情報交換できる場があると、仕事の面でも一体感が生まれてチーム医療にも弾みがつくと思います。
小倉 患者サービスの一環としても重要ですね。

認知度を上げる取り組みをしていきたい

濱﨑 現場の職員の改善をどのように考えていますか。

小倉 病院では聞きなれないかもしれないけれども、一般的なビジネスの世界では、ES(エンプロイーズサティスファクション)なくしてCS(カスタマーズサティスファクション)なしという言葉があります。従業員が満足しない企業に、顧客満足はないという考え方です。病院において、その考え方をどうできるかは非常に複雑なんですが、単純に人数を増やしたら楽になるわけではなくて、システマティックに運用していくことが大切なんですね。いまの視能訓練士の皆さんは、立ち上げた時は2人でしたが、増員したことで機能的になって、実質的に患者サービスにつながっているというのを聞けることが、僕にとって最高の喜びなんです。今後、さらに磨かれていきたいことはありますか。

濱﨑 より高いレベルの訓練を行えたり、新しい検査方法を導入したりできるように、勉強会などにも積極的に参加していきたいです。また、視能訓練士という仕事がまだあまり知られていないので、例えば、看護の日みたいに、目の愛護デーのように、視能訓練士がロビーなどで、簡単な視力検査をして差し上げるとか、眼鏡があっているかどうか眼科の診察を促すとか、認知度を広げる活動ができたらいいなあと思います。

小倉 やると決めたらすぐにでも取り組んでみていただきたいですね。

篠原 やってみたいです。

濱﨑 ドクターではないけれど、相談窓口を設けて、アドバイスしたいですね。

小倉 「やりたい」という自発的な思いが大切ですね。まずは小さいところで、相談窓口を始めて、目の愛護デーに合わせて企画を考えていくこともいいですね。

濱﨑 ドキドキワクワクしてきました。

篠原 個人的には、目指すところは濱﨑さんです。技術的な面でいえば、ある程度できるようになってきましたが、患者さんと関わる時に、年上の方が多いので、人生経験もまだ浅いため、相談されてもすぐ的確に答えられないこともあります。これから経験を重ねながら、先輩の姿も参考にして、患者さんに寄り添える視能訓練士を目指して、より成長してけたらと思います。
小倉 師を追い抜くのが弟子の仕事だから。これまで、何となく分かっていたようでいましたが、知らないことがまだまだあることが分かりました。眼科という狭い範囲とはいえ、この病院の重要な部分を担っていただいてありがとうございます。先ほど、お二人が気づいたように、まだまだやれることがありそうですので、やらない理由を探している間に動いてください。これからもよろしくお願いします。

【視能訓練士とは】
 目を専門とする検査技師。「見る機能=視能」を医師の指示のもと、検査、評価、訓練を行っている。視力・視野検査などの一般の検査をはじめ、斜視弱視など視機能回復訓練、低視力者への眼鏡・ルーペなどの調整とリハビリ訓練などを行っている。

【過去の様子】

第一回 病院長×保安職員

第二回 病院長×医療ソーシャルワーカー

第三回 病院長×誠仁会

第四回 病院長×リハビリテーション科

第五回 病院長×クラーク

第六回 病院長×がんセンター

第七回 病院長×公益財団法岐阜県ジン・アイバンク協会

第八回 病院長×MEセンター

第九回 病院長×(株)トーカイ

第十回 病院長×アシスタントコンシェルジュ

第十一回 病院長×シダックス㈱

第十二回 病院長×セントラルヘリコプターサービス㈱

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