
2026年1月より、県内唯一の「PSMA治療」実施施設として運用が始まりました。
診療科を越えた連携が生み出す可能性についてお二人の先生に、お話をお聞きしました。
A. 診断と治療がセットになって、がん細胞を見つけながら治す画期的な手法です
前立腺がんの細胞表面に多く現れる「PSMA(前立腺特異的膜抗原)」というタンパク質に着目した、最新の医療です。
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このPSMAにくっつく薬剤を使い、がんを照らし出すサーチライトのような役割を持つ「PSMA-PET検査」でがんの場所を特定(診断)し、次に同じくPSMAをターゲットにした放射性物質で攻撃(治療)を行います。このように、診断〈Diagnostics〉と治療〈Therapy〉を組み合わせた、"見つけながら治す"という手法は「セラノスティクス」と呼ばれ、世界的なトレンドとなっています。2025年11月に保険収載されたばかりで、県内では当院が現状唯一の実施施設です。がんを見つけ治療を行う泌尿器科と、放射線を用いて治療をする放射線科が、科の垣根を越えて密接に協力。それぞれの専門知識を結集する、万全のチーム体制を整えています。
A. 従来の検査では見つけられなかった小さながんを可視化できる点にあります
PSMA-PET検査では、PSMAに結合する薬剤に放射性物質を付着させて点滴投与し、全身撮影してその分布を調べます。CTやMRIなどでは、主に腫瘍の形やサイズを見る「形態診断」をしますが、PSMA-PET検査はPSMAの発現程度を画像化するもので、全く別の概念によるアプローチです。これまで形態診断では転移かどうか判断が難しかった5mm程度の小さなリンパ節転移であっても、PSMAが発現していればはっきりと捉えることができます。これにより、治療の適格性をより正確に判断できるようになりました。
岐阜大学医学部附属病院放射線科 講師
河合 信行 先生
A. 薬剤が自らがんを探して攻撃する、いわばミサイルのような治療です
治療では、PSMAに結合する薬剤に検査で使用したものとはまた別の、「がん細胞を攻撃する放射性物質」を付着させて点滴投与します。体内に入った薬剤は自らがん細胞まで飛んでいき、内側からピンポイントで破壊します。外から放射線を当てる治療と異なり、全身に散らばった転移巣を同時に狙い撃ちできるのが特徴です。2~3日ほど専用病室で待機し、放射線量が下がれば退院です。副作用として、PSMAが正常に発現している唾液腺への影響による口の渇きや、一時的な骨髄抑制が見られることがありますが、従来の抗がん剤治療に比べて食欲不振などの負担が少なく、生活の質(QOL)を維持しやすい治療でもあります。この専用病室として、当院には岐阜県内で唯一の「RI治療病室」が2床稼働していますが、この度PSMA治療を導入することを機に、新たに3床「特別措置病室」を整備しました。より多くの患者さんにこの画期的な治療を届けられればと思います。
岐阜大学医学部附属病院泌尿器科 講師
飯沼 光司 先生



