放射線治療の今

常に進化を続ける 放射線治療の現在地

　手術と抗がん剤治療に並ぶ、がん治療の三本柱の一つである放射線治療は、ここ十数年で大きな進化を遂げました。近年では、治療効果が手術と同等とされる疾患も多く、副作用も大幅に軽減。全身への負担が少ないという特長から、患者さんのQOL（生活の質）を保ちつつ高い治療効果を得られる手段として、国内外で選ばれている治療法です。岐阜大学医学部附属病院は、日本放射線腫瘍学会認定施設として、専門医による診断のもと、患者さんの状態に応じた最適な治療方法を提供しています。

　当院は、体外から放射線をあてる「外照射」も体内からあてる「内照射」も、大学病院ならではの高度な治療水準と幅広い対応実績を持っています。外照射において、副作用を限りなく抑え、その上で高い治療効果を可能にするのは、最新鋭のリニアック（高精度治療装置）を駆使した多様な治療法。病巣に対してミリメートル以下の精度で照射し、周囲の正常組織への影響を最小限に抑えます。現在、リニアック2台体制で高精度放射線治療を行っています。

▲高精度な放射線治療を支えるリニアック「TrueBeam EDGE」。腫瘍のかたちや位置に合わせて1mm以下の誤差で照射を行うことができ、特に脳や肺など、精密な制御が必要な部位への治療に力を発揮します。画像誘導機能と短時間照射を併せ持ち、患者さんの負担軽減と治療精度向上を両立しています。

放射線治療の可能性を広く伝えたい

高度な治療を提供できる次世代の人材育成

患者さんに安心して治療を受けていただくために

　放射線治療に対して、日本では「怖い」「副作用が...」といった不安を抱かれることがあります。しかし世界的に見ると、がん患者の約7割が放射線治療を受けており、日本の実施率は約4割と、先進国の中でも低い水準にとどまっています。そうした背景を踏まえ、当院では放射線治療が「安全で身近な治療法」であることを丁寧に伝えることを大切にしています。
　放射線治療のどの治療にも共通しているのは、「患者さんの身体的·心理的な負担をできるだけ軽減すること」です。最新の設備や治療技術を駆使することはもちろんですが、それを扱う医療者の確かな知識と技術と経験、そして患者さんに寄り添う姿勢があってこそ、放射線治療は成り立ちます。大学病院ならではの高度な設備と技術支援体制で、各診療科とも連携し、患者さんに最善の治療を届けるためのチーム医療を実践しています。




　岐阜大学医学部附属病院 放射線治療科では、放射線治療専門医を中心に、診療放射線技師や看護師、事務職員など多職種がー丸となって、治療にあたっています。がんの種類や進行度、ご本人の希望や生活背景までを丁寧 に共有し、それぞれの専門性を生かして、最適な放射線治療を届けるチーム医療を実践しています。
　患者さんにとって「安心して臨める環境」と「安全で質の高い治療」のどちらも大切だからこそ、チーム全体で密に連携し、細やかな対話と確かな技術の両面から支えていきます。