スマートホスピタル特集

Vol.53

2023.06.30

特集

スマートホスピタル特集

     人口減少が加速する中、さまざまな業界でIoT、AI、ロボットなどの最先端技術を活用した取り組みが活発化しており、医療業界においても急ピッチで「メディカルDX」「スマートホスピタル化」が進められています。
     岐阜大学医学部附属病院では、具体的にどんな取り組みを行っているのでしょうか?岐大病院のスマートホスピタル化について詳しく紹介します。
 

    最先端技術をうまく活用することで、人のつながりを大切にしながら
    安全で便利な病院を目指します

       今、内閣府では「Society5.0」を推進しています。これは、仮想空間と現実空間を一体化し、経済発展と社会的課題の解決を両立する社会のこと。分かりやすい例が「クルマの自動運転」や「スマホと連携したスマート家電」などです。医療分野でもIoTやAI、ロボット技術などの活用が急速に進んでいます。人との接触が制限されたコロナ禍の3年間で、人とのつながりを保ちつつ、安全かつ便利な医療を目指す方向へと大きく舵が切られました。岐阜大学医学部附属病院でも、2023年から新たな電子カルテが稼働し始めました。スマホアプリに登録すれば予約状況がいつでも確認でき、診察後の会計も待ち時間なしで支払いが完了します。来院時にはiPadにご自身の病状などを入力してもらえば、その内容が電子カルテに送信され、医師に同じ内容を説明する手間を省けます。このように患者さんやご家族の利便性を考えた「スマートホスピタル化」を積極的に進め ているところです。
     
         2024年4月からは全国で「医師の働き方改革」が始まります。当院でも院内で働く人たちの業務を見直しし、安全かつ効率的な病院運営を行わなければなりません。前述のiPadによる電子カルテへの自動転送もこうした取り組みの一環であり、医師の診療時間の短縮に大きく貢献すると考えています。今夏から導入予定の自走式AI搭載ロボット「temi」も、ポストコロナ時代を見据えた新しい働き方に役立つと期待しているものです。コロナ禍でもロボットの画面を通じて気軽に面会できる仕組みをつくりたいと採用を決めましたが、今後は患者さんを院内の目的地までご案内したり、手術に関する説明動画を流したりと幅広く活用していく予定です。
       
         また、2022年4月に開設された新手術棟では、CTとナビゲーションシステムを連動させ、より正確に手術が行える仕組みを導入しました。今後もARやVRなどの最先端技術を取り入れ、より安全な治療を実現するのと同時に、若手医師の教育にも生かしていく考えです。さらに、院内の移動を支援する自動運転の車いすや、事務作業を効率化するRPA(ロボティクス・プロセス・オートメーション)の導入なども視野に入れています。
         当院のスマートホスピタル化の目的は、患者さんに安心・安全かつ高度な医療を提供する環境づくりを支援することです。当院を利用される患者さんやご家族には、アンケ―トなどを通じて「こんなものがあったら便利だよね」といったご意見をぜひお寄せいただきたいと考えています。皆さんと手を携えながらスマートホスピタル化を進め、誰もがハッピーになれる病院運営を目指していければと思います。

         

        遠隔地でのオンライン診療

           岐阜県関ケ原町の行政や地域の医療機関と連携し、遠隔地におけるオンライン診療の新たなモデルづくりに取り組んでいます。高齢者世帯でも大半のご家庭に設置されているテレビに着目し、ケーブルテレビのシステムを活用することで、大画面を使ってボタン1つで診療予約ができる仕組みを構築。さらに、テレビ上部に取り付けた広角のカメラによる映像を使い、ご自宅の様子から日々の生活状況を把握して糖尿病の診察に役立てた、歩行状況を確認しながらリハビリの指導を行ったりします。加えて、地域の診療所や健診のデータを連携させ、リスクの高い方をいち早く医療につなげる仕組みづくりにも取り組んでいます。
         
           


          コンシェルジュアプリで通院をもっと便利に

          スクリーンショット 2024-04-04 151041.png
             2023年3月1日から通院サポートアプリ「HOPE LifeMark-コンシェルジュ」を新たに導入しました。
             電子カルテと連携したスマホ用アプリで、患者さんの快適な通院やオンライン診療などを支援するシステムです。アプリからいつでも予約状況を確認でき、予約前日にはスマホに通知が届く機能を搭載。クレジットカードを登録すれば、待ち時間なく会計を済ませることが可能です。支払い履歴はアプリで確認でき、後日来院した際に専用機で領収書を発行することもできます。「診察時や会計時の待ち時間」や「来院日のうっかり忘れ」など、患者さんの不満や不便を解消します。
           
            ▼インストールはこちらから(クリックで外部サイトにリンクします)



            着衣型ホルター心電計で患者さんの来院の負担を軽減する

               症状のない不整脈を発見するには長時間の心電図検査が必要であり、この検査に用いられるのが、24時間心電図を記録できる「ホルター心電計」です。従来のホルター心電計は、装着時・回収時に来院しなければならないという難点がありました。「着衣型ホルター心電計」であれば、患者さん自身で装着できるため、装着時・回収時の来院が不要になります。
              自宅に郵送でお届けし、使用後に返送してもらうだけで済むため、遠方の人でも検査しやすいのがメリット。仕事や学校で忙しい人でもより手軽に検査を受けることが可能です。

              〔製品名〕
              e-skin ECG データレコーダ
              医療機器認証番号:304AFBZX00001000
             
              スクリーンショット 2024-04-04 154349.png


              AI搭載型ロボット「temi」を導入

                 当院は今夏よりAI搭載型ロボット「temi」を導入予定です。スマートフォンやPCでの通話やテレビ会議システムでは実現できない、自然対話、表情認識、音声感情分析、顔認識等のコミュニケーションに特化した機能を持つAI搭載型ロボットです。患者さんとご家族の対話を実現しつつ、「新しい形のお見舞い」をつくり、患者さんとご家族の皆様に信頼していただけるような病院であり続けたいと考えています。
               
                お話を聞いた人・・・
                岐阜大学医学部附属病院
                病院長 
                1. 秋山 治彦 先生

                副病院長・医療情報部長
                1. 矢部 大介 先生