がんゲノムセンター
CANCER GENOMICS CENTER
Greeting
センター長挨拶
がん医療は今、大きな転換期を迎えています。従来の画一的な治療から、患者さん一人ひとりのがんの性質に応じた「個別化医療」への移行が進む中で、がんゲノム医療はその中核を担う重要な分野として注目されています。
がんゲノム医療は、検査結果に基づく治療薬の選定のみならず、患者さんが治療の選択肢を理解し納得して進むための一助ともなります。私たちは、この先進的な医療を確実に、そして丁寧に提供することで、がんと向き合うすべての患者さんとそのご家族に希望を届けたいと考えております。そして質の高い医療を提供するためには、専門知識を持つ医療従事者の育成が欠かせません。当院では、定期的に講習会や勉強会を開催し、岐阜県内の医療機関と連携しながら、人材育成にも力を注いでいきたいと考えています。
本センターが、岐阜県におけるがんゲノム医療の拠点として、地域医療に貢献し、皆さまの信頼に応えられるよう今後も尽力してまいります。

岐阜大学医学部附属病院
がんゲノムセンター長牧山 明資
About
がんゲノム医療とは
がんゲノム医療とは、多数の遺伝子を一度に調べることができる装置を用いてがんゲノム解析を行い、がん細胞の遺伝子異常を調べて分析することで、個々に適した治療薬情報を提供する次世代のがん医療です。これにより保険医療として、あるいは治験・臨床試験を通して最新の治療を患者さんに届けることが可能となってきました。
岐阜大学医学部附属病院は、厚生労働省より指定された「がんゲノム医療連携病院」(令和7年4月1日時点、全国235 施設*1)であり、県内で初めて「自立型エキスパートパネル」を持ちました。全国的にも連携病院で自立型エキスパートパネルを持つ病院(令和7年4月1日時点、全国32施設*1)はまだまだ少なく全体の10%程度となっています。
エキスパートパネルとは、患者さんの遺伝子情報をもとに、ゲノム医療の専門家や薬物療法の専門家など多職種の医療従事者が集まり、担当医を交えて適切な治療法の推奨を決定するゲノム医療の肝とも言える重要な会議体のことです。当院ではこのエキスパートパネルを自施設で実施できる体制を整えており、検査結果をより迅速に患者さんにお伝えできることが大きな特徴です。
また、ゲノム疾患・遺伝子診療センターとの連携を通じて、遺伝性腫瘍への対応も進めており、疾患の早期発見や家族への適切なサーベイランスの提供にも努めています。
Medical examination
がん遺伝子パネル検査とは
当院で扱うがん遺伝子パネル検査
検査名 | OncoGuideTM NCC オンコパネル |
FoundationOne® CDx |
FoundationOne® LiquidCDx |
GenMine TOP |
Guardant360® CDx |
ヘムサイト |
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保険・自費 | 保険 | 保険 | 保険 | 保険 | 保険 | 保険 |
必要な検体 | 病理検体 ・ 血液 |
病理検体 | 血液 | 病理検体 ・ 血液 |
血液 | 腫瘍部(末梢血、骨髄液、病理検体)正常部 (口腔粘膜、爪) |
遺伝子数 | 124 | 324 | 324 | 737 | 74 | 452 |
検査対象の方 |
|
|
- 入院中の方は遺伝子パネル検査対象外
- 病理検体:手術や生検などで摘出したがん組織
- ヘムサイトは疾患毎に算定条件が異なりますので、希望される方は予め主治医へご相談ください
がん遺伝子検査を受けることで分かること
- ご自身のがん細胞に
見られる遺伝子の異常明らかとなり、
がんの個性が分かります。 - 治療効果が期待できる、
国内で承認済みの治療薬の情報が
得られます。 - 治療効果が期待できる、
国内で臨床試験(治験等)中の
治療薬の情報が得られます。 - がんの発症に関わる遺伝子の
生まれつきの変化(がんになりやすい体質)
をお持ちかどうかを知る
手がかりとなります。
Examinee
保険診療で行う
遺伝子パネル検査の対象について
- 一般的に対象となる人や状態
-
- 標準治療の終了が見込まれる人
- 標準治療終了後
- 標準治療がない、原発不明がん、希少がんなど
現在標準治療中の方でも、前もって相談いただくことが可能です。その場合、タイムリーに検査を行うことが出来ますので、当院では事前相談をおすすめしています。
Important
パネル検査の注意点
- 本検査には、次のような限界があります。
この点をご了解いただいたうえで、
本検査を申し込んでください。 -
- 本検査を利用しても、あなたのがんの診断や治療に有用な情報が何も得られない可能性があります。
- 本検査は、治療効果が期待できる治療薬の情報を提供しますが、その治療薬の治療効果を保証するものではありません。
- 本検査で判明した「がん」に関係する遺伝子の異常に対して効果が期待される薬剤が見つかったとしても、あなたのがんに対して承認されていない(※)場合、薬剤の入手が出来ない、あるいは投与ができない可能性があります。
※「保険診療で使えない薬剤」または「他のがんや病気では保険診療で使えるが、あなたのがんでは使えない薬剤」を指します。 - 本検査から得られた遺伝子解析データの解釈(有効性が期待できる薬剤情報等)は、あくまで解析を行った時点での遺伝子情報や治療情報のデータベースに基づく岐阜大学医学部附属病院における判断であり、同じデータであっても異なる医療機関や、後日再解析した場合には、異なる解釈となる可能性があります。
- がん遺伝子検査は、検査の性質上、使用された病理組織の採取部位、時期によって解析結果が異なる場合があることが知られています。従って、今回の検査で得られた結果が、将来別な病理組織を使って検査した場合に、異なる解析結果となることがあります。
- 今回のがん遺伝に関する外来受診、検査は、がんの治療・診断に関するセカンドオピニオンとは異なります。
診断内容や治療方針について、専門医の意見や判断を希望される場合には、別途、セカンドオピニオンにお申し込みください。
Possibility
遺伝性腫瘍が判明する可能性
遺伝性腫瘍に関連した遺伝子の変化が見つかった場合のカウンセリングの流れ

- 検査の結果によっては遺伝性腫瘍を疑う所見が得られる場合があり、専門の遺伝カウンセラーやがんゲノム医療コーディネーターと連携して、開示希望のある患者さんへの適切な情報提供を行っています
System
がんゲノム医療外来の診療体制
予約の要否 | 完全予約制 |
---|---|
申込方法 | 紹介状を発行した医療機関から 岐阜大学病院総合患者サポートセンターにFAXで申込み |
診察日 | 月曜日AM |
Achievements
これまでの検査実績
2019年より検査が開始されており、年々提出件数が増加してきております。
がん組織を用いた検査のみならず、最近では血液を用いた検査も増加傾向にあります。
当院におけるがん遺伝子パネル検査提出数の推移

Flow
診察の流れ

注意事項
- 他院に通院中の方は、がん遺伝子検査相談を受ける際に病理検体が必要です。受診の際にご持参ください。
- がんゲノム医療外来は担当医との調整により受診日が決まりますので、お時間をいただく場合があります。ご了承ください。
外来受診から検査までの流れ
- 保険診療(NCCオンコパネル検査・FoundationOne・FoundationOneLiquid・GenMine TOP・Guardant360)
- 予約
- 主治医に相談し、検査の説明を受ける
- 受診・検査
- がんゲノム医療外来で検査の説明を受ける
- 解析・検討期間(約1ヶ月)
- ※状況により検体再提出となる場合もあり、その場合はさらに時間を要する場合もあります。
病理検体および採取された血液からDNAを抽出して品質を確認し、検査可否を判断次世代シーケンサーを用いて遺伝子解析を実施。
検査結果判明後、エキスパートパネル(専門家による検討会)で治療方針を検討。 - 結果
- 検査結果の説明を受け、治療方針を相談(遺伝性腫瘍の可能性がある場合には遺伝カウンセラーとの相談を実施することも可能です)
検査後の治療について
- 現在、保険診療で認められている標準治療が行われている患者さんは、効果を認めている間は原則、その標準治療が優先されます。遺伝子検査の結果に基づく治療はその後の選択肢としてご考慮いただけますが、状況により判断が異なる場合もございますので、主治医とご相談いただくこととなります。
- 遺伝子検査の結果、既に保険償還されている薬剤が推奨された場合は、主治医の先生の下で治療を受けていただくことが可能です。現在治験実施中の薬剤が提案された場合は、その治験を実施している病院をご紹介いたします。
- 遺伝子検査の結果、効果が期待される薬剤による治療が先進医療として実施されている場合は、その先進医療実施病院を紹介して、自費診療と保険診療を並行して治療を行う可能性が考えられます。
- 遺伝子検査を実施しても、治療薬の選定に有用な情報が何も得られない可能性もあります。