診療

麻酔を中心とした周術期管理やペインクリニック診療など幅広い専門性を生かして、
日々の診療を行っています。

4.ペインクリニックが扱う代表的な疾患

帯状疱疹に関連した痛み

(ア)帯状疱疹痛

神経に沿って帯状に疱疹ができ、その部位に激しい痛みが残る病気です。原因は水痘・帯状疱疹ウイルスで、健康な人でも体内にあり、過労・睡眠不足・感冒などで抵抗力が弱ったときにこのウイルスが活性化されて発病すると考えられています。症状は小さな水疱が帯状に出現します。体中どこでも起こります。帯状疱疹の症状のうちで最も悩まされるのは激しい痛みです。通常、発病二週間後に最も強く、夜も眠れないほどです。治療としては、抗ウイルス薬の投与や安静が中心となります。痛みに対しては、鎮痛薬や必要があれば神経ブロックを行うこともあります。

(イ)帯状疱疹後神経痛

帯状疱疹発症後、皮疹が消失したあとも痛みや皮膚の感覚過敏や異常感覚が残る神経痛の一種です。神経がウイルスによって損傷されたあとの神経痛ですので、いかなる治療にも反応しにくいことが多くあります。残念ながらこの痛みに対しては神経ブロックを行っても完全には痛みをとることは困難です。様々な薬物療法や点滴治療を用いて痛みの軽減を目指します。

くび・肩・腕の痛み

(ア)変形性頚椎症

慢性に肩がこる、手がしびれる、痛い、などの症状があるときは、この病気が考えられます。

(イ)頚椎椎間板ヘルニア

頚を動かすと、頚から肩・手にひびく痛みや、咳・くしゃみで痛みが強くなったり、手もしびれたりします。骨と骨のクッションの役割を果たしている椎間板の髄核が突出して神経の根元を刺激したりすることにより起こります。

(ウ)頚椎椎間関節症

捻挫や関節の変形で痛みを起こします。

(エ)外傷性頚部症候群(むちうち症)

後頭部から頚・肩・背中の痛みが主な症状です。時に目まいや耳鳴り、嘔気などの症状を伴うことがあります。

(オ)肩関節周囲炎

肩の関節をつくっている筋肉や腱などが炎症をおこす病気です。慢性的に肩が痛み、腕を動かしにくくなります。

(カ)脊柱管狭窄症

脊髄の通り道(=脊柱管)が狭くなり神経を圧迫する病気です。

(キ) その他

その他にも末梢神経がいろいろな原因で障害され、シビレや痛みが起こる病気や、腕に傷を受けた後などに、強い痛みが起こる複合性局所疼痛症候群(CRPS)などがあります。

上記の病気に対する神経ブロック治療:
  1. 星状神経節ブロック
  2. トリガーポイント注射
  3. 硬膜外ブロック(一回法)
  4. 椎間関節ブロック
  5. 神経根ブロック
  6. 椎間板ブロック
  7. 腕神経叢ブロック
  8. 脊髄電気刺激療法

腰や下肢の痛み

(ア)椎間板ヘルニア

椎間板の髄核が後ろへ飛び出し腰や足の神経を圧迫あるいは刺激したりして痛みやしびれを生じます。

(イ)脊柱管狭窄症

脊髄の入っている管(脊柱管)が狭くなり神経を圧迫する病気です。歩行すると脊髄神経の血液循環が悪くなって、一時的に歩けなくなってしまいますが、短時間の休憩で再び歩行可能になるのが特徴です。

(ウ)椎間関節症

腰椎の関節の変形や繰り返す炎症によって腰痛を起こします。

(エ)変形性脊椎症

腰椎が変形するために腰が痛くなります。

(オ)脊椎分離症・すべり症

腰椎の後ろの部分に切れ目が生じたり、腰椎の並びが前後方向にずれることにより起こる痛みです。

(カ)筋筋膜性腰痛症

腰の筋肉の捻挫や疲労によって生じる腰痛です。

(キ)骨粗しょう症

腰椎がスポンジのようになる病気です。骨の構造がもろくなっているため、容易に折れてしまい、痛みがでます(脊椎圧迫骨折)。

上記の病気に対する神経ブロック治療:
  1. トリガーポイント注射
  2. 硬膜外ブロック
  3. 神経根ブロック、神経根パルス高周波術
  4. 椎間関節ブロック
  5. 脊髄神経後枝内側枝熱凝固術
  6. 椎間板ブロック
  7. 脊髄電気刺激療法

頭の痛み

頭痛を大きく分けると、「急性頭痛」と「慢性頭痛」の二つがあります。もし強い頭痛が突然、何の理由もなく始まって次第に強くなり24時間以上続く場合は、脳神経外科の救急処置を必要とすることが多いので十分注意しなければなりません。また意識障害や高熱がある時や、視力障害や吐き気が出てきた時もすぐ脳神経外科、神経内科を受診する必要があります。以前から高血圧や肺の病気や心臓病などの全身性の病気を持つ方や、数週間から数カ月前に頭部の打撲を受けた記憶があれば、やはり脳神経外科を受診して下さい。

(ア)片頭痛:

女性に多く発生します。頭痛が始まる前に、キラキラした虹かガラスの切口の様なものが見えたりすることがあります。症状は2~3時間から数日続きます。この様な頭痛の発作が普通は1週間から1ヶ月に1回の割合で出現します。頭痛は片方のこめかみや目がズキズキ痛みだし、次第に頭全体に広がり、頭が割れそうな痛みに変わってきます。

(イ)群発頭痛:

まれな病気で、男性に多いとされています。群発頭痛の発作は特徴的で発作は毎日ほぼ同時刻に始まります。夜中から朝方にかけて、特に眠ってから2時間くらいで起こってきます。その持続時間は15分~2時間位です。発作が出ている期間は数カ月続くこともありますが、だいたい2~4週間で、1年に1回あるいは数年に1回です。この時期のことを群発期と呼び、この期間を過ぎると自然に頭痛は出なくなります。群発頭痛の痛みは片側の眼・こめかみ・側頭部・後頭部に多く、同時に涙や鼻水、眼の充血なども起こります。

(ウ)緊張型頭痛:

両側性の後頭部・首筋・肩などの締め付けられるような持続痛です。疲労やストレスが続くと悪化します。朝は比較的楽ですが、午後になるとだんだん強くなります。この頭痛は後頭部の筋肉の持続的な緊張状態から起こって来る頭痛です。

頭痛の治療:

片頭痛や群発頭痛には、最近、効果的な薬が何種類か発売されています。筋収縮性頭痛の治療は内服薬の他トリガーポイントブロックやその他のブロックを組み合わせて行うこともあります。

顔面の痛み・けいれん

(ア)特発性三叉神経痛

発作性の激痛が特徴です。食事や会話などで口を動かしたり、軽く顔に触ったりすることで激痛発作が誘発されます。この痛みの発作は5~20秒位、長くても2分以内で治まり、発作が終われば痛みはなく普通の状態に戻ります。夜眠っている時に痛みで目がさめるということはありません。原因は、脳幹から出た三叉神経が周囲の血管に圧迫されるために痛みが起こるとする考えが有力です。

特発性三叉神経痛の治療
  1. 薬物療法:
    抗痙攣薬であるテグレトールが特効薬です。眠気・ふらつき・目まい・吐き気・便秘・皮疹などの副作用が起こることがあります。
  2. 神経ブロック療法:
    神経あるいは神経節に直接ブロック針をあて神経破壊薬を注入するか、あるいは高周波熱凝固法を用いて神経を遮断する方法です。痛みの部位によってブロックする神経を決めます。眼窩上神経・眼窩下神経・上顎神経・おとがい神経・下顎神経ブロックおよびガッセル神経節ブロックなどがあります。有効期間はブロック部位や方法により異なりますが、1回のブロックで1年前後の鎮痛が期待できます。ブロック後は一定の部位の感覚が消失します。
  3. 手術療法:
    血管の圧迫を取り除く手術で脳神経外科の医師が行います。
  4. ガンマナイフ:
    脳神経外科や放射線科で行われています。

(イ)眼瞼あるいは片側顔面けいれん

目の回りや顔の筋肉が無意識にけいれんする病気です。現在はボツリヌストキシンによる治療が最初に選択されます。

その他の痛み疾患

(ア)複合性局所疼痛症候群(Complex Regional Pain Syndrome)

持続的で局在性が不明瞭な難治性の痛みがあり、血管運動障害・発汗障害、皮膚・爪などの退行性変化、筋萎縮、骨粗鬆症などの局所栄養障害をきたす病態の総称です。外傷をはじめとする様々な原因によっておこるとされています。治療法としては、薬による治療や神経ブロック療法が用いられます。痛みを軽減した上でのリハビリテーションが重要とされています。