診療

麻酔を中心とした周術期管理やペインクリニック診療など幅広い専門性を生かして、
日々の診療を行っています。

3.ペインクリニックの治療の実際

神経障害性疼痛は、単一の方法のみでは治療が困難なことが多いため、いくつかの治療を組み合わせることが多いです。ペインクリニックでは主に、薬物療法とインターベンションを中心として治療に取り組んでいます。

薬物療法


薬物療法では、一般的な鎮痛薬の他、神経障害性疼痛に有効であるとされている抗うつ薬、抗けいれん薬などを用います。最近は、国内で神経障害性疼痛・難治性慢性疼痛に使用できる保険適応のあるこの種の薬物が増えました。また、オピオイド性鎮痛薬の製剤も増え、1人1人の患者さんの痛みの性質や副作用を考慮しながら調整を行っています。

インターベンション

a.神経ブロック

神経ブロックは、非常に多くの種類があり、対象となる疾患により行うブロックが異なります。例えば腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症による坐骨神経痛に対する神経根ブロックや、三叉神経痛に対する三叉神経ブロック(上顎神経ブロック、下顎神経ブロック、ガッセル神経節ブロックなど)です。神経ブロックは、外来処置室で行う比較的簡単なものから、手術室でX線透視装置を用いて行うものまで様々です。また最近では、神経ブロックの安全性をより高めるために、X線透視装置に加えて超音波装置を積極的に用いています。
神経ブロックにおいては、局所麻酔薬やステロイドを用いるだけでなく、高周波熱凝固法(Radiofrequency Thermocoagulation : RF)を用いることがあります。これは高周波エネルギーを用いて遮断したい神経を熱凝固することにより、神経の伝達機能を長期的に遮断する治療手段です。約300Hzの高周波電流により分子が振動することで針先の非絶縁部を中心に周囲組織に熱が発生します。RFでは、周囲組織への影響が少なく安全性の高い治療法です。

b.刺激鎮痛療法(脊髄電気刺激療法など)

脊髄電気刺激(Spinal Cord Stimulation)がその代表的なものであり、体内に埋め込まれた機器から、脊髄に留置されたカテーテルに微弱な電気を流して痛みの緩和を図る治療法です。鎮痛機序としては、脊髄刺激により脊髄後角での抑制性神経伝達物質の増加が起こり、それらの物質を介して神経の異常な興奮性が抑制されると考えられています。適応疾患としては、複合性局所痛症候群(CRPS)、脊椎術後痛症候群(FBSS)の他、末梢血流障害(ASO、糖尿病、バージャー病など )にも用いられています。手術適応のない脊柱管狭窄症や、重症帯状疱疹後神経痛なども対象となることがあります。

c.新しい治療法:パルス高周波法(Pulsed Radiofrequency : PーRF)

高周波電流を42℃以下で間欠的に通電し電場を発生させ、神経に影響を与えることによって除痛を得る治療手段です。神経を破壊しないため、RFと比較し知覚低下・筋力低下を来しにくいので、運動神経を含んだ下肢の神経への治療などに用いることが出来ます。作用機序としては、針先に生じる電場が鎮痛効果に関与するとされ、細胞膜内のナトリウムイオン、カルシウムイオンの働きの抑制作用や、脊髄後角における慢性痛の長期増強の拮抗作用、炎症性サイトカインの抑制作用などが報告されており、一種の刺激鎮痛法と考えられています。