網膜硝子体手術における可視化技術と新規補助剤開発

岐阜大学眼科を中心に大学や診療科の垣根を超えて、企業とも積極的に共同研究を行っています。基礎研究や臨床研究とともに、研究費獲得、知財化、特許申請も行っており、基礎・臨床研究の結果を患者さんに還元できるようトランスレーショナル・リサーチに取り組んでいます。

近年の硝子体手術の発展はめざましく、広角観察法、高輝度光源、フィルター、極小切開硝子体手術など新しい技術や概念が導入されてきています。これらは硝子体手術に必要な「観察」のための技術であるとともに硝子体可視化法の開発と共に生まれてきたものです。眼球を構成する角膜や水晶体、硝子体、網膜など主要組織は、その高い光学的性能のために透明性を維持していますが、病的状態においてはその透明な眼内組織に対してしばしば手術操作が必要になります。硝子体手術においては、しばしば透明で繊細な硝子体切除や内境界膜剥離、増殖膜除去が必須の手技となっています。硝子体手術の重要な目的は硝子体切除であり、多くの網膜硝子体疾患で後部硝子体剥離の完成や残存硝子体皮質の除去が有効な治療となり得ます。近年これらの透明組織に可視化剤を用いることで、困難な手技をより安全、確実に行うことが出来るようになり、世界的にChromovitrectomyと称され多くの網膜・硝子体疾患の治療成績の向上にも寄与しました。

私も硝子体可視化剤Triamcinolone acetonide (TA)プロジェクトに参画し、続いて内境界膜可視化剤Brilliant Blue G(BBG)では中心的な役割を果たしました。
現在はこのTAやBBGは世界で90を超える国々で使用されており、何百万人もの患者さんの治療に貢献しています。
本邦でも可視化剤を利用した手術療法の啓蒙活動に積極的に注力しております。第72回日本臨床眼科学会ではインストラクションコース「硝子体手術自由自在」において、「黄斑前膜」をテーマに企画、主催しました。硝子体手術の最新の知見に基づき、内境界膜剥離法の最適化についてご紹介致しました。

また全てはここでは紹介しきれませんが、細胞生物学、分子生物学、病理学の知識を基礎として、さらに可視化剤を超えて、更なる治療法開発に向け、新規硝子体手術用補助剤の開発に取り組んでいます。企業と共同研究を行い、産官学で新たな展開を図っています。また今後の研究成果についてもご報告致します。

内眼炎における網羅的PCRの有用性

微生物による内眼炎では、時に治療に抵抗を示して重篤化し、重度の視力障害をきたすことがあり、早期の適切な診断ならびに治療の開始が大切です。一方で、原因微生物によっては通常の検査法では検出が困難なことが多々あります。そのため、神戸市立神戸アイセンター病院 ぶどう膜炎検査室における眼科網羅的感染症検査を利用して、当院に通院する内眼炎患者さんから採取した検体を用い、内眼炎の患者背景ならびに治療経過を把握し、適切な内眼炎の診断・治療方法の確立を目指しています。

眼疾患におけるDNA、RNA、タンパク質、細胞の網羅的解析

眼科疾患の患者の皆様から体液(血液、唾液、涙液、房水、硝子体)のいずれかを採取し、その中に含まれるDNA、RNA、タンパク質、細胞を分析し、病気との関係を明らかにすることによって病気の早期発見、予防、そして治療法の開発に役立てることを目的としています。

線維柱帯切除術後の長期経過

マイトマイシンC併用線維柱帯切除術は、現在日本で最も施行されている緑内障術式です。しかしながら、その長期的経過(10年以上)についてはほとんど知られていません。長期経過を調べることにより、人生100年時代を全うする視機能保持の仕様につき探っています。

眼圧変動の緑内障性視神経障害に与える影響

近年病院で通常測定する眼圧値のみではなく、日常の眼圧変動(睡眠時など)が緑内障進行に影響を及ぼすことが指摘されています。こうした日常の変動をできるだけ捉え、治療に役立てようとする試みを行っています。

OCT angiography(OCTA)を用いた緑内障に対する新規進行評価法の開発

緑内障では、病状が進行すると視野検査やOCTによる構造評価が測定限界に達し、実際には進行していても変化を捉えにくくなることがあります。当科では、このような後期緑内障に対して、従来法では把握しにくい進行をより正確に評価する新たな方法の開発に取り組んでいます。とくに、網膜血流に着目することで、治療方針の決定や長期的な視機能維持に役立つ実用的な指標の確立を目指しています。